海外デビューはここから

最短で写真作家を目指すならFOTO FESTのポートフォリオレビューがオススメ。必要事項と裏ワザ教えます!

海外デビューはここから

「海外でもアーティストとして認められたい」もうすぐ60歳の実力あるフォトグラファーの皆さんへ。写真作家として認められるためには「作品が売れる」こと。それを最短で叶えられるのがヒューストンで開催されるFOTO FESTのポートフォリオレビューです。

なぜ、ポートフォリオレビューなら「自分の作品を売りたい」などの夢が最短で叶うのか

今やプロアマ問わず、誰もが写真家やフォトグラファーと名乗れる時代になりました。

では、写真作家や写真アーティストとはなんでしょうか?

それは作家あるいは芸術家として、自分の作品を制作している人を指します。

でも、これらも勝手に名乗ることはできます。

そうではなくて、多くの人に写真作家や写真アーティストと認められるには「作品が売れる」ことです。

そのために、作家ができることはもちろん「いい作品をつくる」ことですが、作家自身が「作品が売れる」機会をつかむ必要があります。

それがポートフォリオレビューです。

ポートフォリオレビューについては、こちらの第4章「ネットで申し込める海外フォトコンなら英会話不要」に書いてありますので参照してください。

ひと言でいうと、「自分の作品を売り込みに行く場所」です。

参加者はシリーズ作品(プロジェクト)15〜20点とアーティスト・ステートメントなどを持参して、レビュアーと呼ばれる批評家たちにプレゼンします。

そのレビュアーには美術館やギャラリーのキュレーター、出版社の編集者、国際写真フェスティバルのオーガナイザーやコレクターなどがいます。

自分がどの目的で参加するかによって、たくさんいるレビュアーの中からセレクトして15人ほどに会います。

美術館で個展を開催したい場合には美術館のキュレーターに会って売り込めばいいわけです。ギャラリーと契約して作品を売ってもらいたいならギャラリーのキュレーターを選び、写真集を出版したいなら編集者を選びます。

国際写真フェスティバルに招待されたいならそのオーガナイザーに会い、作品を買ってもらいたいならコレクターを選びます。

では、なぜ、「ポートフォリオレビューなら作品を売りたいという夢が最短で叶う」のでしょうか?

それは、レビュアーの中に作品を売ってくれるキュレーターがたくさんいるからです。

彼らは「写真作家の作品を売って手数料をもらう」のがビジネスです。

ただし、美術館で作品を売るのはそのお金で美術館の運営費に回すためです。写真作家から寄贈してもらった作品をオークションで売って美術館の運営資金に充てています。

この場合には写真作家にお金は入らないので純粋な意味で「売れた」ことにはならないかもしませんが……。

けれども、ギャラリーはさきほど書いたように、「作品を売る」のがビジネスですから、そこのキュレーターさんは真剣にポートフォリオレビューに参加しているわけです。

自分のギャラリーの顧客たちに売れそうな作品がないか、熱心に探しに来ています。

その話を裏付けるような出来事を、私の友人の写真作家が体験したことがあります。

当時、彼はポートフォリオレビューの存在を知りませんでした。

そのため自分の作品を持って、ニューヨークのギャラリーが立ち並ぶ通りへと出向きました。日本から航空運賃と滞在費を使ってです。

そして、一軒一軒、ドアを叩いて訪問して行きました。

ですが、ほとんどのギャラリーはアポなしでは門前払いでした。キュレーターが不在ということろも多かったようです。

そして、最後のギャラリーで彼はこう言われました。

「作品を見せたいならポートフォリオレビューに行きなさい。僕たちも自分好みの作品を見つけるためにポートフォリオレビューに行っているんだよ」

飛び込みで入ってきた新人作家など相手にされませんし、じつはギャラリー側も「売れる」作品を求めて、色々なポートフォリオレビューに参加しているのです。

ドイツでギャラリーを開いている友人夫妻からも聞いたことがありますが、飛び込みで来た作家は相手にしたくないそうです。

それは “自分たちの好みの(売れると自分たちが判断した)作家を自分たちで見つけたい”からだそうです。

その点、ポートフォリオレビューならたくさんの写真作家に会える。そして、その中から効率よく自分のギャラリーの好みの作家を見つけることができるからだと教えてもらいました。

つまり、ポートフォリオレビューは「売れる写真作品を真剣に見つけに来ているキュレーターがたくさんいる」場所です。

だから、ポートフォリオレビューはあなたの「自分の作品を売りたい」という夢が最短で叶うところ。ベストな機会なのです。

数は少ないですが、真剣に作品を買いたいと参加しているコレクターもいますから、「作品を売りたい」あなたには絶好のチャンスです。

ポートフォリオレビューの中でも最も「写真作家になる夢を実現しやすい」FOTO FESTのレビューとは

世界最大規模のポートフォリオレビュー”FOTO FESTのThe Meeting Place”は歴史も長い価値あるレビュー

たくさんある海外のポートフォリオレビューの中でも、世界最大規模といわれているのがヒューストンで2年に一度開催されている FOTO FESTのポートフォリオレビューです。

そのポートフォリオレビューの名前が”The Meeting Place”。

FOTO FESTというのはFESTという名前の通りFestival。つまり写真に関するお祭りです。

ほとんどのポートフォリオレビューはこのような国際写真フェスティバルの中の1つのイベントとして行われていることが多い。

例えば、南仏プロヴァンス地方のアルルという街で毎夏、開催されているポートフォリオレビューも、”ARLES : LES RENCONTRES DE LA PHOTOGRAPHIE”の中で開催されています。

これはフランス語で「写真家たちの集い」という意味です。

ワークショップや街中での写真展、ビデオ作品の上映会など。写真に関する国際的なフェスティバルの期間中に行われるいろんなイベントの1つとしてポートフォリオレビューも行われています。

もちろん、FOTO FESTでもポートフォリオレビューの期間中に、近隣で招待作家の展覧会をたくさんをやっています。加えて、ヒューストン市内の70以上の美術館や大学などを含むスペースで写真だけでなくアート作品の展覧会が開かれています。

著名な写真アーティストの作品のオークションなども開かれています。そのため、ポートフォリオレビューの関係者だけでなく、世界中から写真やアート関係の専門家たちがFOTO FESTには集まってきます。

2024年はビエンナーレであるFOTO FESTの開催が決定している年です。ポートフォリオレビューの日程やレビュアーのリストがちょうどいま発表されているので見ていきましょう。

FOTO FESTのトップページから見ていきます。

コンテンツの真ん中にある”The Meeting Place”をクリックして開きます。

その前に、英語ではなく、日本語に変えておきたいという方は検索アプリ上で言語を変えておきましょう。

日本語にすると、”The Meeting Place”は「集会所」という名前に変わります。

「集会所」なんて変な名前ですが、これはアプリの直訳なので少し変なのは仕方ないかな。本来は「出会いの場所」という意味になると思います。

開いて出てきたところにその名前の由来が記されていますので参考にしてください。

少し意訳になりますが、以下のような感じでしょうか。

Meeting Placeはアメリカのポートフォリオレビューとしては最大規模で最も長い歴史を持っています。

1986年のスタート時から、何千人もの写真アーティストとアート写真のスペシャリストたちを集めてきました。

数日間にわたるこのイベントはまさに『出会いの場所』です。

参加者がネットワークを築いたり、アイディアを共有して、長く続く関係を構築できるところです。

アメリカで最大というのは、ポートフォリオレビューの参加者とレビュアーの数が最も多いということです。

そして、アメリカで最大であるということは世界最大といってもいいでしょう。

Meeting Placeの下の文章にはポートフォリオレビューについての簡単な説明が書かれていますので、これもまとめてみます。

参加する写真家には1 対 1 のポートフォリオレビューが16 回保証されています。

1回のレビューは20分間です。

講評を受ける作品は完成したシリーズ作品(プロジェクト)でも進行中で未完成でもOKです。

あなたの作品がより良くなることを手助けします。

展覧会、作品の販売、ギャラリーとの契約、写真集の出版などの具体的な方法によってあなたのキャリアを支援します。

これでFOTO FESTのポートフォリオレビューの概要がだいたいつかめたかと思います。

2024年のFOTO FESTポートフォリオレビューには延べ75名のレビュアーが世界中から集まる

さて、さらに下へスクロールしていくと、日程や参加するレビュアー(批評家)の顔ぶれを確認することができます。
まず、日程は以下の2つの時期に分かれています。
⚫︎第1期(Session1)は、2024年3月10(日)〜13日(水) の4日間
⚫︎第2期(Session2)は、2024年3月16(日)〜19日(水) の4日間
つまり、このセッション1か2、あるいは両方を参加者は取ることができて、それぞれの4日間の間に16名のレビュアーにプレゼンできるということです。
ということで、セッション1とセッション2の「レビュー担当者」というのを開いてみてください。
レビュアーはセッション1では39名、セッション2では36名が載っています。
両方のセッションに参加するレビュアーもいますが、延べ人数にすると75名になります。
かなりの人数ですよね。
このセッションが4セッションある年もこれまでありました。そんなときは1カ月に亘ってポートフォリオレビューが行われるのですから、本当に世界最大という感じになります。

どのセッションにするか、誰に見てもらうかは目的による。何を実現するための売り込みなのかを明確にしよう!

FOTO FEST 2024の場合には2つのセッションですが、セッションがいくつかある場合にどのセッションにするかは自分の都合のよい日程ではなく、目的に応じて決めるといいです。

自分が何を目的にこのポートフォリオレビューに参加するのか。その目的を果たすことのできるレビュアーがたくさんいるセッションを選びましょう。

具体的には、以下のように目的をまず明確にして書き出しておきましょう。

⚫︎美術館での展覧会を開催したい
⚫︎ギャラリーと契約して作品を売ってもらいたい
⚫︎海外の出版社から写真集を出版したい
⚫︎国際写真フェスティバルに招待してもらい展覧会を開きたい
⚫︎コレクターに作品を売りたい
⚫︎世界的な雑誌(ネットマガジンも含む)で作品を紹介してほしい
⚫︎自分をサポートしてくれる財団を見つけたい
⚫︎写真専門のコンサルタントにアドバイスを受けたい

ポートフォリオレビューに参加する目的は1つだけでなくてもいいです。

FOTO FESTのポートフォリオレビューでは1つのセッションで16名まで会えるのですから、上記のような感じでいくつか書き出して、それに合うレビュアーをリストの中から探していきます。

どの国、どの地域に売り込みたいかという要素も含めて考えましょう。
セッション1も2も、もっとも多いのはキュレーターです。両方ともに26名ほどいます。
編集者はセッション1に4名、セッション2に6名。コレクターは両方とも2名。国際写真フェスティバルの関係者も両方とも2名。ほかには写真専門のコンサルタントが1名ずついます。
なので、両方のセッションともそんなに差はないと捉えていいでしょう。
ただし、キュレーターといっても、大きな美術館のキュレーターなのか、写真センターまたはギャラリーのキュレーターなのか。そういう違いがありますのでよく確認しましょう。
名前のところをクリックして開き、それぞれのレビュアーについて確認してみてください。
彼はヒューストンにあるThe Museum of Fine Arts(ファインアート美術館)のキュレーターです。
アメリカに3つほどあると言われている写真美術館の1つですから、ここで展覧会や永久保存になればかなりの名誉です。
マルコムさんがどのようなキャリアで、どのような分野に興味を持っているかなども書かれていますので、よく読んでチェックすることをお勧めします。
とくに「こういう写真には興味がありません」はよく読んでおいてください。
自分の作品がそれに該当しているのを知らずにそのレビュアーを選んでしまって、「興味ない」と言われて撃沈した参加者を見たことがあります。ここの部分は要注意です。
また、さきほど書いたように、美術館は基本、作品を売ってはくれません。
買い取ることもほとんどなく、永久保存やオークションの場合も、写真作家は寄贈するのが一般的です。
なので、「作品が売れた」ことにはなりませんが、美術館での個展やオークション作品に選ばれることはとても名誉なこと。ものすごいキャリアになります。
永久保存(パーマネント・コレクション)に至っては、超一流のアーティストとして認められた証拠だといえます。
こちらのクリストファーさんはポートランドにあるブルー・スカイ・ギャラリーのオーナー兼キュレーターです。
ギャラリーといっても非営利のギャラリーであり、とても有名なギャラリーです。新進アーティストを手厚くサポートすることでも知られています。
ギャラリーの規模も色々ありますし、キュレターといっても、美術館でいう館長に当たるオーナークラスなのか、アシスタント・キュレーターなのかによってもかなり権限が異なります。
ブルー・スカイはこじんまりした私営のギャラリーと異なり、これまでの活動実績も素晴らしいです。
また、最後のほうにこのギャラリー がどのような作品を好むのかよく説明されています。なので、自分の作品がそれに該当するのか事前にチェックしてから、レビュアーとして選ぶか検討してください。
また、マルタさんのようにキュレーターと書かれていても、国際写真フェスティバルのキュレーターという場合もあります。
レビュアーさんがどの国あるいはどこの地域なのもよく見て選ぶときの参考にしましょう。
彼女は「プロジェクトのアーティスト・ステートメントを教えている」と書かれているので、納得できるところまで練り上げたステートメントを持参しましょう。
アーティスト・ステートメントについてはこちらの記事を参考にしてください。
海外で展覧会を開きたいというのが売り込む目的であったとしても、どんな場所で展覧会をしたいか。どんな国や地域でしたいのかを考えてから、レビュアーひとり一人のプロフィールなどよく見て選んでください。
「作品を売る」ことが目的なら、それをいちばん優先した人選をしてください。
その上で、自分の希望が叶うレビュアーが多くいるセッションを選びましょう。

写真についてのアドバイスをもらいつつ作品を売ったり、展覧会を開いてもらいたいなら写真家兼のこの2人がおすすめ

FOTO FEST 2024のポートフォリオレビューのレビュアーはセッション1と2共にキュレーターは26名ほど。
編集者はセッション1に4名、セッション2に6名。コレクターは両方とも2名。国際写真フェスティバルの関係者も両方とも2名。ほかには写真専門のコンサルタントが1名です。
そして、セッション1とセッション2のレビュアーは延べ人数で75名いると書きました。
ポートフォリオレビューは作品を売り込む場所であり、自分の夢を実現できる相手にプレゼンする機会です。
なので、基本的に自分の作品ついてのアドバイスをもらう場所ではありません。
でも、どうしても作品についてのアドバイスがほしいという場合には、写真家でありながらキュレーターやコレクターであるレビュアーを選ぶといいでしょう。
FOTO FEST 2024のポートフォリオレビューのレビュアーさん75名の中にお2人だけそういう方がいます。
前の章で紹介したブルー・スカイ・ギャラリーのオーナーであるクリストファー・ラウシェンバーグさんは写真アーテイスとして、世界8カ国126回個展を開催していると記されています。
しかし、それだけでなく、クリストファーさんは1975年のブルー・スカイ・ギャラリー設立以来、793人の写真アーテイストによる963回の個展と61回のグループ展を共同でキュレーションしてきたと書かれています。
ブルー・スカイでは年間22回の個展やグループ展を開催。また、出展アーティストのために過去7年間で146の図録を作成して新進アーティストをサポートしています。
さらに過去20年以上にわたっては、FOTO FESTのような国際写真フェスティバルで出会った46カ国178人の写真アーテイストの個展も開催しています。
つまりはクリストファーさんは写真作家ではあるものの、これだけ多く展覧会を開催する力を持ち、それを行使する権限を持っているキュレーターでもあるわけです。
世界的な写真アーティストとしての実力と有望な新進作家を見抜くキュレーターしての眼力を持ち合わせています。
だから、著名なブルー・スカイ・ギャラリーで展覧会を開催したいという夢をアピールしつつ、写真作品についてどういうふうにすべきか的確なアドバイスもしてもらえるはずです。
ほかのキュレーターやエディター、国際写真フェスティバルのオーガナイザーでは一般的にアドバイスはもらえません。
レビュアーはそれよりもあなたの作品を見て自分の仕事としてできることがあるか。それを考えています。
ギャラリーのキュレーターなら、「自分のギャラリー向きの作品で売れそうか」を見ています。なので、アドバイスをするということはありません。
自分たちの美術館やギャラリー、出版社、国際写真フェスティバルに登用できる写真アーティストの人選に来ています。見たもので判断してビジネスになるか見定めているのです。
なので、「こうしたらいいよ」というアドバイスはしないのです。
でも、どうしても世界的レベルで自分の作品に対するアドバイスがほしい場合には「写真アーティストでもあるレビュアーさんを選ぶといい」というわけです。
FOTO FEST 2024のポートフォリオレビューにはそんなレビュアーさんがもう一人います。
FOTO FESTのポートフォリオレビューではクリストファーさんと同じく、何度もお会いしているので顔馴染みのブラジルの写真作家です。
とても気さくなホアキンさんですが、彼は写真アーティストとして素晴らしい実績も持っています。
ここに書かれているように、自身の作品がヒューストンのThe Museum of Fine Arts(ファインアート美術館)やメキシコシティのCentro de la Imagenやフランスの Bibliothèque Nationale de France(フランス国立図書館)などに収蔵されています。
ですが、彼はコレクターとして多くの作品を持っていることでも知られています。
1978年以来、作品を購入し、2005年にはコレクションの3分の2に当たる約2,000点をリオデジャネイロ近代美術館に寄贈しています。
ですから、彼によって作品を購入されたアーティストはリオデジャネイロ近代美術館の永久保存なっているものもあるでしょう。
また、ホアキンさんはコレクションの作品を展示する国際巡回展覧会も企画しています。
なので、写真アーティストとして有能ですが、それだけでなく、彼も作品を購入する力や展覧会を開催する力を持っています。
もちろん、だから新進作家を見出す鑑識眼もありつつ、アート写真作品をつくり上げるためのアドバイスもできる。実際に、ホアキンさんが新進作家にアドバイスしているところも何度も見ています。
なので、ポートフォリオレビューは本来、アドバイスをもらう場ではないと理解しつつ、それでもアドバイスがほしいという場合には、写真作家でもあるレビュアーさんを選んでみてください。

ほとんどの写真家が知らないポートフォリオレビューに行く前に決めておかねばならないことと裏ワザ

自分の作品のサイズとエディション、価格はポートフォリオレビューに参加する以前にホームページに明記しておきましょう

あなたは自分の作品のサイズとエディション、価格などをきちんと決めていますか?
もし、あなたが作品を販売することに興味がなく、「海外で展覧会を開きたい」「写真集を出版したい」「国際写真フェスティバルで招待作家として作品展を開きたい」というだけでFOTO FESTのポートフォリオレビューに参加する場合でも、最低でもこの3つは決めておかねばなりません。
下記は SAMURAI FOTOのディレクターである吉田繁さんのサイトです。
よくご覧いただくと、真ん中にある『祈りの境界』というプロジェクトのタイトルの後ろに(2012-2022)と記されています。
これは2012〜2022年まで撮影されたプロジェクトで2022年にコンプリートしたことを意味します。
左の『Message from Fukushima』は(2019-)なので、2019年から撮影し始めてまだオンゴーング(途中)であることを示しています。
その下に、赤字で書かれているのがプロジェクトの作品点数です。
『祈りの境界』は85作品、『Message from Fukushima』は26点となっています。
その下に”Baryta paper”と書かれているのが使用している用紙です。ハーネミューレ社のバライタという用紙を使っているということがレビュアーにはわかります。
そして、その下がサイズとエディションです。
作品の販売は美術館の展覧会ではあまりありませんが、ギャラリーならあり得ることです。
「国際写真フェスティバルへの招待や写真集の出版ならもっと関係ない」と思われるかもしれません。
でも、そうではないです。
そもそも作品を制作中、つまり撮影する段階から「どのくらいのサイズでプリントするのか」が念頭にないと解像度が足りなくなるかもしれません。
逆に、小さいサイズにするのに解像度を高く撮影すると制作の段階で扱いにくくなる場合もあります。
また、エディションは作品の価値を決めるためのものでもあります。日本語では「限定数」という意味になります。
写真は絵画と違い、ある数を限定にして「⚪︎枚以上はプリントしません」というエディションを決めないと、際限なくプリントや現像ができてしまいます。
そんなふうに写真作品の価値を下げないように、エディションという概念が持ち込まれました。
エディション20枚のうちの1枚目なら、作品には1/20と書かれ、20枚目なら20/20。最後の1枚だと急に価値が上がったりすることもあります。
ルールはありませんが、多くてもエディション20か15、最近は一桁というのも多いです。
サイズについては同じ作品で大小2種類、A4とA2サイズとしている写真作家を見かけることが多いです。
こちらもルールはないので、自分の作品はどのくらいのサイズが適しているか、実際に何度かプリントして確かめながら決めるといいと思います。
いちばん悩ましい問題は価格です。
いろんな方が「いくらが相場でしょうか」と質問されますが、それはご自身で決めるしかありません。
ただし、これからアートマーケットにデビューする新人ですから、高くはならないです。でも、「日本だとA4サイズで3万円でも売れないからもっと安くするべきでしょうか」という考えは間違っています。
A4サイズで5万円以下だと逆に「その程度の価値なの?」と思われてしまうからです。
初めて値付けをする方にお勧めしているのはA3で15〜20万円程度です。
20万で高いといわれたら「特別にディスカウントしますから」といって、あくまでも正規の金額は20万円から変更しないのがお勧めです。
エディションもですが、価格も途中で変更はできません。
一度決めて販売し始めたら、そのままで売り続けないとそれ以前に購入した人に悪いからです。
当初の値段より下げてしまうと、下げる前の価格で購入した人には知らない間に価値が下がっていたことになります。これはエディションについても同じで10枚だと思って買ったのに、それ以上の点数になっていたらやはり価値が下がることになるからです。
サイズとエディション、価格についておわかりいただけたと思いますが、販売しないのになぜそれが必要かというと、それによってあなたの作品の価値をレビュアーたちは判断するからです。
初めて会う写真作家なら、レビュアーはまったくあなたについて知りません。
なので、レビューで対面する前に、彼らはその写真作家のホームページをチェックしています。
サイズとエディション、価格を決めて、ポートフォリオレビューに参加する以前に、ホームページに明記しておくべきと書いたのはこういった理由からです。
サイズとエディション、価格はあなたの作家としての価値を見定めるための大切な基準なのです。
そこまでするのと驚くかもしれませんが、作品にはすべて番号も振っておくといいでしょう。
それは、実際の販売のときにも、美術館やギャラリーでの展示が決まったときでも、どの作品がほしいと番号で伝えることができるからです。
FOTO FESTのポートフォリオレビューは作品を売り込みに行く場所といいました。
だからこそ、これだけの準備を整えて行く必要があると心得ておきましょう。
ホームページからこのようなPDFがダウンロードできるようにもしておくとベストです。
吉田さんの場合にはここに価格が入り、一点一点についてのショートストーリーも含まれています。
日本人の特性なのかもしれませんが、「相談に行く」という感じでポートフォリオレビューに行くのはやめましょう。
実際に「この写真作家ならすぐにでも展覧会ができそう」と判断されたら、どういう展示の仕方を好むかということまで聞かれます。
そういう場合、「黒いマットを入れてA1サイズの額に入れて飾りたい」あるいは「掛け軸のように仕立てて展示したい」などのように具体的に答える必要があります。
なので、できればそこまで写真アーティストとして準備しておきましょう。
認められたら即、いろんな質問にも答えられること。
つまり、FOTO FESTのポートフォリオレビューというのは、レビュアーが気に入れば夢の実現はそれほど早いのです。
ですから、参加するこちら側の一人前の写真アーティストとして、万全の準備を整えていきましょう。

持っていくものはプロジェクト作品15〜20点とアーティスト・ステートメント。そして、⚪︎⚪︎付きのリーフレット

さて、FOTO FEST 2024のポートフォリオレビューに実際に申し込むを手順をたどっていきましょう。

「2024年の集会所に登録する」をクリックして開きます。

すると、登録料の金額が記されています。
早く登録すると100ドル安くなるようですね。
FOTO FESTのアカウントをお持ちの方は「サインイン」、お持ちでない方は「作成」してください。
そのうえでサインインして入っていくと、名前や住所、アンケートなどが並んでいますので、すべて記入してください。
そして、最下欄の「提出」をクリックすると、FOTO FESTの事務局に送信されます。
およそ2週間ぐらいの間に「確認メール」が来ますので、それまで待ちましょう。
というわけで、あと実際にポートフォリオレビューに持参するものを準備しましょう。
それはもちろん、作品とアーティスト・ステートメントです。
作品は1つのプロジェクトの中からセレクトした15〜20点ほどがいいです。
いくつものプロジェクトを持っていかないほうがいいです。というのも、レビューは20分ですから、ステートメントを読んでもらったり、作品を見せていると1つのプロジェクトの時間くらいしかありません。
以前、いくつものプロジェクトを持参したフォトグラファーに会ったことがありますが、彼女は結局、焦ってドタバタしてしまい悪い印象を与えることになってしまいました。
アーティスト・ステートメントについては、どのような内容にしたらいいのかはこちらに書いていますので、参考にしてください。
日本語で文字量300字以内にまとめて、それを英訳してもらったものをプリント。それを見せたり、作品とともに口頭で話して最後にプリントを渡すといいです。
また、日本ならば、自分の連絡先として名刺を渡しますが、欧米、とくにポートフォリオレビューでは誰も名刺を渡しません。
その代わりに、参加するフォトグラファーたちはポストカードを渡します。
表に、作品がプリントされていたり、ホームページとメールアドレス、SNSなどが書かれているものです。
ですが、それよりももっといいものをSAMURAI FOTOでは考えました。
それが顔写真とアーティスト・ステートメントが入ったリーフレットです。
上記は、吉田繁さんのリーフレットでセンターで折ると、20cm四方の2つ折りになります。
反対側に、作品数点とアーティスト・ステートメントがレイアウトされています。
ほかの参加者がポストカードなのに、なぜお金をかけてまでリーフレットをつくって行って渡すのか。
それには理由があります。
これまで何度も海外のポートフォリオレビューの取材をしていると、レビュアーさんたちが苦労していたからです。
彼らは一日に何人ものフォトグラファーに会います。4日間のセッションの間には、どの作品がどの人だったのか、顔と作品がゴチャゴチャになってしまうのでしょう。
それを防ごうと、気に入ったフォトグラファーだけは作品を顔の横に持ってもらって携帯で撮影していました。
アーティスト・ステートメントのプリントを渡したとしても、それがどんな顔の人で、どんな作品だったかも忘れがちです。
みんなが渡しているポストカードではこれらの問題は解決しない。だから、レビュアーさんたちは独自に工夫して写真を撮ったりしていました。
それを見ていたので、SAMURAI FOTOでは顔写真とアーティスト・ステートメント入りのリーフレットを全員が作成してレビューの終わりに渡すようにしました。
いまでも、ドイツのビックママと呼ばれている有名なレビュアーのTinaさんには「SAMURAI は全員準備がいい。そういうふうにするべきだとほかのポートフォリオレビューでも教えている」と言われています。
なお、このリーフレットは作家の顔になるわけですから、レベルの高いプロのデザイナーに頼んでレイアウトしてもらってください。
安く済まそうとして、自分でデザインするのはもってのほか。アートのスペシャリストであるレビュアーさんには一発で見抜かれます。
ぜひ、質の高いリーフレットを持参しましょう!

まとめ : FOTO FESTのポートフォリオレビューのための事前準備と持ち物

では、ここまでのお話をまとめていきましょう。

その前に最後の裏ワザをお伝えしておきます。

それはレビュアーのリストだけを見て決めず、その名前をググッてよく調べておくことです。リストは限られたスペースしかないのでそれほど詳しくは掲載されていないからです。

これは実際にFOTO FESTのポートフォリオレビューで経験したことですが、巨木の写真作品でギャラリーと契約したいフォトグラファーが雑誌編集者だからとあるレビュアーを選びませんでした。

ところが、別の参加者からは「彼は雑誌GEOの編集長で、GEOは木についてよく写真や記事を載せているから、君は彼に売り込むべきだよ」と言われたのです。

じつはその事実はリストの中には書かれていませんでした。ですが、彼の名前でネットをググるとそういう情報が載っていました。

なので、お金をかけて売り込みに行くなら、こうしてリスト以外でも情報を調べてから、レビュアーを選ぶというのが裏ワザになります。

では、FOTO FESTのポートフォリオレビューに当たって考えておくべきことをまとめていきます。

⚫︎何を目的として参加するのか決める。

⚫︎自分の目的を叶えてくれるレビュアーがいるポートフォリオレビューまたは日程を選ぶ。

⚫︎展覧会をしたい場合でも美術館なのかギャラリーなのか国際写真フェスティバルなのか。

⚫︎レビュアーはいろんな国や地域から集まるのでそれも意識して会う人を決めよう。

⚫︎裏ワザとしてレビュアーはリストだけでなく名前でクグッて情報を得よう。

FOTO FESTのポートフォリオレビューに行く前にホームページに明記しておくべき項目

⚫︎作品のサイズ

⚫︎エディション

⚫︎価格

⚫︎作品の番号を明記

FOTO FESTのポートフォリオレビューに持参するもの

⚫︎1つのプロジェクトから15〜20点の作品のプリント

⚫︎プロジェクトのアーティスト・ステートメントをプリントしたもの

⚫︎名刺代わりの「顔写真とアーティスト・ステートメントが入ったリーフレット」

以上、ほかのポートフォリオレビューの場合もほとんど同じなので、ぜひいろんなレビューにトライして、海外デビューしましょう。

最後の最後に、FOTO FESTのポートフォリオレビューに関する重要なアドバイスを1つ。

もし、すぐに目的の実現が叶わなくても、知り合ったレビュアーさんとは連絡をし続けること。

展覧会の通知、新しいプロジェクトの紹介、季節のグリーティングカードなど。なんでもいいので、いいタイミングで連絡をし続けるのがコネクションをつくる秘訣です。

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