巨樹

樹高116m背の高さナンバー1の巨木レッドウッドvs 暴風で倒れたかつてのナンバー1

世界一高い木はレッドウッド国立公園にあるハイペリオン(約116m)です。この木には近づいたら最大で禁錮6カ月罰金5千ドルが課せられることになりました。でも、じつはほとんどの人が知らないかつてのナンバー1(112m)があります。近づくことはもちろん簡単に登れる感動的な巨樹を紹介します。

世界一背の高い木々に囲まれた道路は木漏れ日の美しいレッドウッド・ハイウェイ101号

アメリカの西海岸、カリフォルニア州北西部の太平洋岸沿いに117マイル(約73キロ)に広がるのがレッドウッドの森です。

スギ科の木で海岸線に生育しているため、coast redwoodとも呼ばれています。

樹高100メートルを超える世界一背の高い木として長年、ギネスブックに公認されてきた樹種です。

天を目指して真っ直ぐに伸び、火にも水にも腐敗にも強いこの木は優良材として日本も輸出されています。ウッドデッキなどによく使われていて、とてもいい香りがします。

巨樹が好きな人でなくても、レッドウッドの州立公園や国立公園が点在する101号線をドライブすると最高の気分になります。

恐竜時代から生き続ける生きた化石といわれる背の高いレッドウッドたちは西海岸の強烈な紫外線を柔らかな木漏れ日に変えて、ほどよい湿度で涼しさを届けてくれています。

何より延々と続く巨樹の森は常緑で、いつ訪れても目にも優しい風景を見せてくれます。

早朝には霧が発生することが多く、その光景は幻想的です。

運転しながら、こんな風景が見える道路は世界でここだけでしょう。

そして、101号線沿いには世界遺産のレッドウッド国立公園とたくさんのレッドウッド州立公園があります。木道が整備されていていたり、気軽に歩けるトレイルがあるので、巨樹の森のトレッキングにもぜひトライしてみてください。

世界一は誰もが見てみたくなる。しかし、その願望が自然が荒らすため接近禁止になったハイペリオン

2006年、レッドウッド国立公園で樹高115.92メートル(380.3フィート)のレッドウッドが発見されました。実際に木の頭頂部まで登って、そこから地上までメジャーを垂らして計測されました。

この木を発見したのはカリフォルニア大州立大学フンボルト分校の森林学研究者とクライマー2人で「ハイペリオン」と名付けられました。

樹齢は700〜800年。

ハイペリオンとは古代ギリシャ神話に登場する太陽神「ヒュペリーオーン」のこと。ヒュペリーオーンには「高みを行くもの」という意味があるそうです。

リチャード・ブレストン著『世界一高い木(日経BP刊)』にはこの木が発見されるまでの経緯が書かれています。この本を読んで私もハイペリオンを見たいと思いました。

というのも、それまでのナンバー1とギネスブックで公認されていたレッドウッドを何度も見に行っていて、それを超える木ならぜひ見てみたいという好奇心が芽生えたからです。

潤んだレッドウッドの森の心地よさは何度味わっても忘れ難かったということもあります。

ハイペリオンを見に行くことを前提にさまざまなリサーチもしました。

レッドウッド国立公園の中でもハイペリオン谷と呼ばれる地域で急勾配の場所にあること。もちろん、トレイルやハイキングコースなどなく、密集したヤブをかき分けて行くしかありません。

それでも、この情報が発表されるとすごい数の旅行ブロガーや樹木オタクたちが押し寄せました。そのせいで樹木の下に生えている草や低木はすっかり踏み荒らされ、大量のゴミや人の汚物までが……。

さらに現場はかなり僻地なので何かあっても救急医療がむずかしいとのことで、この木に近づくことそのものを公園当局は禁じることにしました。

2022年には1平方マイル(2.6平方キロ弱)以内に入ることは禁止。破った場合は最大で禁錮6カ月と罰金5千ドルが課せられるようになりました。

世界最長寿のメスーゼラが所在地を明らかにしていないのは木と周辺を保護するためですが、ハイペリオンはそれに加えてあまりに僻地であるため。「大切な天然資源と訪問客の安全を守る」ための措置だということです。

背の高い木は素晴らしい。しかし、残念なのは近づいてもその頭頂部までは見えないこと

皆さんは高い木を見に行ったことがありますか?   その木の下に立っても梢がまったく見えませんよね。

ハイペリオンは25階建てのタワーマンションに相当します。そんな高層ビルの上階はとても見えません。

実際に、ハイペリオンも地上から46メートルあたりまでしか見えないといわれています。

ハイペリオンが発見されるまで長年、世界一高いとギネスブックで公認されていたリビー・ツリーも40メートルあたりまでしか見えませんでした。

樹高112.1メートル、樹齢600年。幹周り13.4メートル。地上20メートルあたりから二股に分かれています。

幹は力強いとは思いましたが、半分以上見えないためか、世界一という実感は正直感じることができませんでした。

離れて見える場所があったのでそこからも見てみましたが、背の高い木が林立しているためか、やはり全貌を見ることはできませんでした。

ただし、レッドウッドの潤んだ森の中はどこも快適で、何時間でも佇んでいられるほど美しいです。

倒れて初めて樹高112mとわかったかつてのナンバー1の木。その木が見せた壮大な白日夢

ハイペリオン発見まで世界一だったリビー・ツリーですが、じつはほとんどの人が知らないリビー・ツリーを超える巨樹が見られる場所があります。

それがフンボルト・レッドウッド州立公園のファウンダーズ・グローブです(最初のmapの南に位置しています)。

この森は数あるレッドウッドの森の中でももっとも美しい森でした。木の下には花が咲き、青い鳥がその中を飛び跳ねていました。

 

そんなピースフルなレインフォレストを歩いていくと、奥のほうに1箇所だけ日差しがスポットライトのように差し込んでいる明るい場所が見えてきました。

それは森の頭頂部がそこだけなくなったギャップといわれているもの。そこに立っていた木がなくなることによってできる空間です。

近づいていくと、光が差している地面に黒い大きなものが横たわっているのが見えてきました。

さらに近づいていくと、それは倒れてしまったレッドウッドでした。

かなり大きな巨樹。こんな木が倒れてしまうなんてと思いながら、周囲を見回しました。

周囲の木も樹高100メートルクラスのレッドウッドばかり。そこにはこの木が倒れたときに周りの木につけた傷がまだ生々しく残っていました。

その傷を見た途端でした。木が倒れたときの大音響が聞こえた気がしたのです。

その場にいた全員がそんな気持ちになるほどですから、この木の倒れようはものすごかったに違いありません。倒れたときの映像まで想像できるほどで、まるで白日夢を見たような気持ちにもなりました。

あとで調べたところ、この木は「ダイアビル・ジャイアント」というレッドウッドで1991年の暴風で倒れたそうです。

しかもリビー・ツリーがナンバー1だった同時、それに次ぐ第2位の木とされていました。けれども、倒れてから樹高を測定したところリビー・ツリーを凌ぐ木だったことが判明しています。

倒木にはなっていますが、それによって根がどんなふうになっているか。最上部がどうなっているのかもよく観察することができます。もちろん、上から下まで触ることもできますし、横たわった幹の上に乗ることもできます。

ハイペリオンは接近禁止になってしまったことですし、もとより近くまで行けたとしても、地上46メートルまでの幹を眺めることしかできません。

かつての真のナンバー1で、たくさんのことが感じられるダイアビル・ジャイアントへ行くことを絶対オススメします。感動すること間違いなし……。

あなたも大音響と白日夢を見られるかもしれません。

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