世界の森

世界一美しい幻の鳥ケツァールが頭上すぐを舞う巨樹の森がコスタリカにあった

レインフォレストの宝庫として知られる中米コスタリカ。固有の動植物が豊富で巨樹もたくさんあります。有名なのが手塚治虫さんの火の鳥のモデルとして知られる幻の鳥ケツァールです。美しすぎる鳥が舞う巨樹の森を紹介します。

エコツーリズム先進国、多くのレインフォレスト、行きたかった国コスタリカで巨樹探しは始まった

世界の巨樹を探す旅は当初、巨樹があることがわかってからその国へ行っていました。ですが、そのうちに私が行きたい国を決め、そのあとに巨樹があるかどうかを調べるというスタイルに変わっていきました。

このときに私が行きたいと思ったのは中米のコスタリカ共和国でした。

それは国土の60%が森林であること。さらに国土の4分の1は自然保護区や国立公園に指定されています。その多くがレインフォレストで、代表的な国立公園のモンテベルデはエコツーリズム発祥の地……。

エコツーリズムとは「持続可能な観光」のこと。自然を守りながら自然を観光資源とする取り組みです。

さらにこの国の変化に富んだ自然は世界屈指の動植物の宝庫です。コスタリカの陸地は世界のわずか0.03%ですが、そこに全動植物種の5%が生息しています。鳥類・蝶類・ランなどは世界の10%と驚くべき数です。

面積51,100㎢(日本の約7分の1)の小さな国の中に、ジャングルの熱帯雨林、高地の熱帯雲霧林、低地の熱帯乾燥林、活火山、カリブ海、大平洋と、多様な自然が凝縮されています。

極めつけはタバコン温泉で、アレナル火山の麓から湧き出るお湯が渓流となり流れるその水温は39℃。広大な掛け流し温泉は天然のままでちょうどいい温度で最高です。

森がたくさんあって、動植物もたくさん見ることができる環境保護の先進国。自然大好きな人は行くしかない国だと思いませんか?

そして、ダメ推しのように私の背中を押してくれたのは「秘境」があること。

「最後の秘境」ともいわれるコルコバードは手付かずの熱帯雨林と美しい海の両方を楽しめる自然愛好家には絶対オススメの地。コスタリカの南に位置しますが、首都サンホセからは飛行機と車、ボートと乗り継いで行きます。

ジャングルと眼下に広がる大平洋。島陰に沈む夕陽を見ていると無人島にいるような気分になります。

ロッジには大型のコンゴウインコやサルの群れが現れ、森にはナマケモノ、ジャガー、オセロット、バク、キタコアリクイ等の大型哺乳類が棲息しています。

「こんな国には絶対行きたい」と巨樹があるか調べていると、なんと、そのコルコバードの森の奥にすごい木があることがわかりました。

というわけで、コスタリカへの「世界の巨樹を見に行く会」ツアーは催行決定!

こんな巨樹に会えるならと、すぐに20名が集まりました。

秘境コルコバードの森の奥に密かに立っていたのはそれまで見たことのない驚愕の巨樹

半島のように突き出た先端に位置するコルコバードへは半島の付け根にあるシエルペ(Slerpe)からボードで向かいます。

川に出てからしばらくすると中米最大のマングローブ林へと入っていきます。映画のワンシーンの中にいるような気分で、アマゾンを旅しているようでした。

ボートの旅を終えて秘境コルコバードに到着。このエリアには道路もなく、電気も自家発電。陸路で来ることはできないので島のような雰囲気です。

エコツーリズム先進国の中でももっともエコロジカルな場所。コスタリカ人も憧れの地だそうです。

海岸から坂道を登ってやって来たのはマレンコビーチ&レインフォレストロッジ。周囲は野鳥がたくさんいて、海が見えるレストランには気持ちいい風が入ってきます。

広い敷地のなかにはかわいいコテージが点在していました。自家発電なので夜11時から朝7時までは停電です。ロウソクの灯りで過ごす夜もまた幻想的で素敵でした♥

ロッジに到着直後、レストランのすぐ前の木に色鮮やかなオオハシを発見。後ろの木にはおサルさんまで……。ものすごく自然豊かな地に来たことを実感しました。

ロッジのサイトで見つけた巨樹へは1時間、コルコバード国立公園の森をトレッキングしながら行きます。歩き出すとすぐにこれまで見たことのない木に出会いました。

高い木の上にはナマケモノもいました。すごく長い爪が見えましたが、本当に全然動きません。赤ちゃんを抱えたナマケモノもいて可愛かったです。

熱帯雨林の森には板根が張った木や、日本で観葉植物として売られている植物の巨大化したのが木に巻き付いたりしていて、ジャングルを探検しているみたいです。

この森で何度もモルフォ蝶を見ました。ブルーに輝きながら優雅にヒラヒラと飛ぶ姿は夢のようでした。

たくさんの見たことのない花や実も見ました。

大きくて変わった実を発見。サガリバナ科の木の実で下のように割れます。何かの容器みたいでした。

首都サンホセは高原で標高は1,100メートルあるので涼しいですが、ここは熱帯雨林。海抜100メートルに満たない森は湿度100%。しかも巨樹までの道はアップダウンが激しかったです。

それでも、あのすごい巨樹を見たくて皆さん、せっせと歩き続けました。

汗をたっぷりかきつつ、めずらしい植物や木の写真を撮りながらなので、予定の1時間を越えて1時間半のトレッキングになりました。

少し疲れましたが、巨樹を前にした途端、全員が一気に元気になり、幹周りを測ったり撮影したり、動き回っていました。

そして、実際に目の前にするとやはり、木はものすごく大きかったです。

コルコバードの森に棲む巨人のようでした。

現地名はFrijolon。学名はDussia tessmannii、英名はSangrilloのマメ科の木です。

板根が発達しすぎていて測定は難しかったですが、幹周り18メートル。樹高は30メートル以上でした。

見れば見るほど、驚異の巨樹に見えました。

今回のツアーでどうしても見せたかった木です。目にした途端、皆さんが感激してくださったのでとってもうれしかったです。しつこく調べてよかったと思いました。

帰りは短いボート移動で行けるドレクベイ空港へ。そこから18人乗りのかわいらしい飛行機に乗って、サンホセ空港へと向かいました。

私たちの頭上すぐをつがいで飛んでいったケツァールに感動して全員が泣いた

コスタリカツアーの決め手はコルコバードの巨樹でしたが、調べていくと、国内にたくさんの巨樹があることがわかりました。

毎年、「並外れた巨樹」というのを選出していて、リストも存在しました。さすが環境保護の先進国です。

コスタリカのツアーではサンホセにあるさくらツーリストにコーディネイトをお願いしました。社長でコスタリカの日本人公認ガイドの下村昌也さんがガイドをしてくれました。

「並外れた木」に選ばれた巨樹があり、マヤ文明の神の鳥でバードウォッチャー憧れの幻の鳥ケツァールも見られる森があるというのも下村さん情報です。

そこはサンホセからクルマで2時間ほど南東へ行ったセロ・デラ・ムエルテ。標高2,500mの熱帯雲霧林は、雲と霧が発生しやすくコケとシダ、着生植物が木を覆う鬱蒼とした神秘的な森です。

マイナスイオンが降り注ぐ快適な森。ここでケツァールに出会えれば一生の思い出になるでしょう。ただ、自然のことですから、ケツァールに出会えるかどうかは運次第です。

私たちは朝食前の早朝6時に森へ出発。標高が高いために日の出前でまだ肌寒い中を静かに歩き出しました。

明るくなり、次第に冷え込みが緩んできた森を歩いていると、小さな実がたくさん落ちていることに気づきました。

「これがケツァールが大好きなリトルアボカドの実です」と下村さんに教えてもらいました。

「この森にはケツァールが大好きなリトルアボカドの木がたくさんあります。だから、彼らはここに棲んでいるんですよ」と下村さん。

見上げると確かにリトルアボカドの木が円を描くように林立していました。その中心は低木や草が生えた野原のようになっていて、私たちはそこに立っていました。

すると、誰かが「あれっ、ケツァールじゃありませんか?」と呼びました。

下村さんがテレスコープでその方向を見せてくれると、確かに蛍光グリーンに輝く姿が見えました。

体長はハトよりひと回り大きいくらいの30センチほどで、尾のような長い飾り羽を入れると1メートル以上の大きさ。黒いつぶらな瞳まで見えました。

ケツァールまでの距離は15メートルくらい。しきりにリトルアボカドの実を食べていました。ケツァールに出会えただけもラッキーですが、こんな近くで見られるなんて感激です。

ケツァールはメキシコ南部からパナマ西部にかけての山岳地帯、標高1,200〜3,000メートルの熱帯雲霧林と呼ばれる森に生息します。

マヤの王は5色の羽を持つケツァールを神の鳥とし、その羽を身に着けることで王の権力を示しました。その後、その美しさ故に人間の乱獲などによってその数は減り、見られることも少なくなった幻の鳥です。

なので、現在では限られた場所でしか出会えることができません。

そんなケツァールに出会えただけでも幸せだと思っていると……、

なんと、私たちの頭上5メートルあたりをオスとメス、つがいのケツァールが別のリトルアボカドの木へと飛んでいきました。

羽を広げたオスの胴体部分は鮮やかなレッドカラー。長い飾り羽をヒラヒラさせて飛ぶオスのあとを地味めなメスが追っていきます。

鳥というより軽い羽が風に舞うような飛び方。スロモーションのようにゆっくり感じたのは突然、想像を超えた出来事が起こったので意識がついていけなかったせいかもしれません。

振り返ると、女性陣は全員、感動の涙を流していました。こんなに近くを飛んでくれるなんて信じられない出来事でした。

ケツァールに出会いたいなら場所だけでなく時期も重要なポイントです。12〜4月にかけてがオススメ。この時期は好物のリトルアボカドがなる時期で、子育て準備に巣に戻って来る時期なのでより一層発見のチャンスが広がります。

その後も何度か訪ねていますが、私たちは100%至近距離で出会えています。

では最後に、セロ・デラ・ムエルテの巨樹を紹介しますね。

幹がうろになっていて、この木の空洞でピューマが雨宿りしたといわれています。とにかく大迫力。いまにもピューマが出てきそうな巨樹でした。

現地名はCipresillo、 学名Podocarpus oleifolius、英名Podocarp、和名はアブラマキ。幹周りは19メートルでした。

私たちはSavegre Mountain Hotel(サベグレ・マウンテン・ホテル)に宿泊しましたが、標高2200mに位置する広大な敷地内の75%は原生林でした。

約170種の野鳥が棲み、ケツァールの個体数は世界でもトップ・レベル。バードウォッチャー憧れの場所です。こちらもチェックしてみてください。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました